2015年8月14日金曜日

Day 7 ホットスイーツ

 トニーは今日フトニーと、行列ができるラーメン屋にふと出かけた。「幸運の俺たち金持ちは、やっぱメーランっしょ」と、車中でウキウキ言ってきたフトニーに、トニーは「あまり調子に乗らない方がいい。幸運を吹聴すると、運が落ちるってオラの父ちゃんが言ってたぞ」とフトニーを諭した。するとフトニーは、「オラの父さんは真逆のことを言っていたぞ。調子に乗った方が幸運がやってくることもあるんだよ」とトニーに言った。確かに、フトニーの父さんは去年、車を運転中に右側の道路に落ちていた500円に気付いて急停止し、500円をサッと拾って対向車に危うく引かれる夢を見た翌日に、パチンコ屋の前で1万円を拾って、その1万円がきっかけでギャンブル依存症になった人をカウンセリングで助けて、その人の親が金持ちで、謝礼として、ものすごい甘いメロンをもらったことがある。


「さぁ、着いたぞ」と言って、トニーとフトニーは、フトニーの父さんが1万円を拾ったパチンコ屋の前でふと降りた。フトニーがトニーに言った、
「オラの父ちゃん、あのメロンの甘さは忘れられないってよく言ってるんだ」
「分かる気がする、それ」
「だろ? そのメロンって、父ちゃんがあの日帰りにちょっと立ち寄った、いきつけの風俗嬢からももらったんだって、同じ日に」
「同じ日に? 次の日じゃなくて?」
 ハングリーゴッドが二人に力を貸したのか、そんなメロントークを交わしながら、二人はパチンコ屋の裏手にあるラーメン屋に向かって加速した。
「うわぁ…すごい行列」とトニーがフトニーに言いながら、「隠れた名店らしいからな、やっぱり」と、フトニーが、さっき路上でサッと拾った昭和64年のプレミア付きの500円硬貨を見てニヤニヤしながら言った。
「じゃあ、どっちに入る、トニー?」とフトニーが聞いてきた。そう、なんと2つの行列が両隣のラーメン屋の前に出来ている。1回で2種類の味を味わうために、フトニーが右側のラーメン屋に、トニーが左側のラーメン屋に入った。

「いやぁ~、ひどい」と言って二人は同時に出てきた。
「店内、アホみたいに暑かったぞ…。死ぬかと思った。しかも、なんだよ、メロンラーメンって!」とフトニーが言うと、
「こっちもそう。冷房壊れてんじゃないか。しかも、俺の食べたチョコレートラーメンのチョコなんて、さっきのパチンコ屋の景品で出してるやつだぞ」と、トニーが応えた。
「結局、行列ができているからと言って、周りに流されてはダメだ」と、二人は声を揃えて言いながら、携帯で撮った。


 家に帰ると、トニーは両親に事情をすべて説明した。フトニーとラーメン屋に行ったこと、途中でフトニーの父ちゃんのメロンエピソードを思い出したこと、フトニーが昭和64年のプレミア付きの500円硬貨を拾ったこと、行列のできるラーメン屋のラーメンが、どちらもスイーツ過ぎるラーメンだったこと、店内が異常に暑かったこと、チョコラーメンのチョコがパチンコ屋の景品と同じだったこと、そして、フトニーが昭和64年のプレミア付きの500円硬貨を拾ったときに、本当は対向車にひかれて手が折れていたこと。
 それを聞いたトニーの父さんは、「そんなことより、携帯で撮ったやつを早くアップしなさい」と言ったので、トニーはユーブチョー(YouBuchosan)にアップロードした。
 寝る前に世間の反応を確認するためにそのページを見ると、コメント欄が荒れていた:
・何言ってんだこいつら www ジャンジャンジャンジャンパチ屋の音で何も聞こえねぇ wwwww
・この2店、ネットで最低の店って言われてんぞ www サクラを使って行列を作ってるって www
・炎上商法で有名な店じゃん www 情弱 wwwwww
・って言うか、リアルに店燃えてんじゃん wwwww
・行列は甘い罠

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