2015年8月23日日曜日

Day 12 ミステリーサークルの仕掛け

 トニーは今日、一人でミステリーサークルに行くことにした。先日某週刊誌で暴露されたミステリーサークルで、いよいよ火星人が地球に、いや、地元にやって来た可能性があると言うので、それを確認するためだ。この話をフトニーから聞いたトニーはフトニーに連絡したが、今日は忙しいということで、都合が合わなかった。
 トニーはグーパーと呼ばれる新しいタクシーアプリを利用して、ミステリーサークルまで向かうことにした。このアプリを利用するために、トニーは先月ガラケーからスマホに乗り換えたばかりだ。

 トニーがグーパーを使ってタクシーを呼ぶと、窓に円盤のシールをベタベタ貼ったタクシーが現れた。運転手が手のしびれを確認するかのように、手をグーパーグーパーさせて、トニーとアイコンタクトを取る。それに応じてトニーは、パーグーパーグーと、運転手に全て勝った。それが噛みあうと、運転手が車の自動ドアを手動で開けた。「グーパー」、「パーグー」。引きこもりでコミュ症でもお気軽にご利用できますとの通りに、会話をする必要がまったくない。さすが、時代を先取りしたグーパー。

 予めアプリで入力した行き先通りに、運転手はトニーをミステリーサークルへと連れて行った。運転手の「グーパー」に応じて、「パーグー」と出そうとしたが、油断したトニーは「チーグー」と出してしまった。「負け」と機械的なアナウンスが車内に流れ、トニーは割増料金を取られた。
 割増料金を取られたせいか、降りた瞬間に強力なガムを両足共に、計2枚踏んでしまったせいか、少しテンションが下がったトニーだが、ミステリーサークルへと向かった。
 
 その後週刊誌に書かれていたミステリーサークルの場所に向かって、30分ほど歩いていたが、それらしい場所は見えてこない。
 
 気づけばトニーは、そのまま3時間ほど歩いていた。強力なガムのせいで歩く速度が遅くなったのか、そろそろ疲れがたまってきたのか、このままだと何だかやばそうな気配を感じたトニーは、再びグーパーアプリでタクシーを呼んだ。

 トニーはずっとタクシーを待ち続けていたが、一向にやって来ない。「これは普通じゃない」と感じたトニーは、普通のタクシーを拾おうとするが、辺りにタクシーはまったく見当たらない。辺りにコンビニなどもなく、死の危険を感じたトニーは、歩いて帰ろうかともしたが、既に現在地や帰り方もわからなくなっていた。「やばい、やばい!」と慌てて、恥を忍んで警察に電話をしようとしたが、その瞬間に過呼吸症候群で意識を失った。


「おいトニー、トニー!」と、トニーの意識を確かめるように、フトニーが目の前で、手をグーパーグーパーさせている。「大丈夫だったか?」とフトニーに言われて、トニーは病院に運ばれたことに気が付いた。フトニーはトニーに、「急に倒れたって聞いて、慌ててこの病院に来たんだぞ」と、口の中で何かをクチャクチャさせながら言った。

 トニーは少し変な感じも覚えたが、気分を落ち着かせるために病室のテレビを見ると、臨時ニュースが流れていた。つい先程、何者かが強力な粘着性の物体を靴底に付けて作ったらしいという、ミステリーサークルが映し出されていた。

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