2015年8月24日月曜日

Day 13 世界同時株安の今後を占うピンと来ない占い師

 世界同時株安の様子を呈してきた昨今の株式市場に一抹の不安を抱いたトニーは、フトニーと一緒に、知る人ぞ知る、一部で有名な占い師の元に行くことにした。
 フトニーが両手で大きな水晶を抱えながらトニーを迎えに、トニーの家にやって来た。「この水晶、運が上がるって言われてるやつだから」と言って、トニーの家の玄関に置いた。「いつも悪いわねぇ」とトニーの母親がフトニーに言って、水晶の代わりにドクロマークの入った地球儀をフトニーに渡した。「これで、もう迷わないでおくれ、ミスターオクレ」と、十八番の母さんジョークを、多少方向音痴のフトニーに笑いながら言った。「いえいえ、いつもすんまそん」と、フトニーがドクロマークに、油性ペンで可愛い目を付け足しながら応えた。「では、とにかくトニーと行ってきます」と言って、フトニーとトニーはフトニーの車に乗り込んだ。


 車を2時間ほど走らせて、有名な占い師が居るという場所に着いた。トニーがフトニーに、「あれっ? ここって普通のボーリング場じゃないの?」と言うと、フトニーが、「んだ。この中に、水晶占いで有名な占い師がいるから」と、月・水・金にしかめったに聞けない、十八番No2の訛りをバリバリ効かせて言った。

 ボーリング場の入口に行くと、中は真っ暗だった。そのまま中に入ると、ちょうど場内とレーンを暗くしたチャンスタイムの真っ最中だった。「うわぁ~、見えにくい」とトニーが言うと、フトニーが突然、「痛ってぇ~!!」と店内に響き渡ることはない程度の悲鳴をあげた。「どうしたんですか!?」とトニーが慌てて、変なおじさんに襲われた若い女性の元へ駆けつけるように聞くと、フトニーが9ポンドのドクロマークの入った地球儀を自分の足に落としていた。トニーがフトニーに、「大丈夫かぁ~?」と志村けんに訴えられるぐらいクリソツのトーンで言うと、「だいじょうぶだぁ~、あはは~ん…なわけねぇ~!! なわけねぇ~だろ!!」と真顔でノリツッコミ気味にトニーにかんしゃくを起こした。続けてフトニーがトニーに、「冗談冗談、怒ってねぇ~よ。それよりも、早く水晶占い師の所へ行こうぜ。そうすりゃ、この足だって元に戻るから」と言って、占い師を探すことにした。

 暗いボーリング場内のチャンスタイムで、各レーンの客が一斉に、平均11ポンドの水晶を和尚ピンに向かって投げている中で、一人だけピン側で水晶が投げられるのを待っている人がいた。フトニーがトニーに、「あの154ポンドのおばさんがそうだよ」と言って、投げられる水晶をジャンプ一番交わしながら、おばさんの近くに向かった。
トニーがおばさんに興奮気味に、「すいません! 占い師の方ですよね?」と聞くと、「い、いや、違いますけど」と言われた。
 その後ボーリング場内のすべての人に聞いてみたが、誰も占い師のことを知らないという。トニーがフトニーに不満そうに言うと、「いや、ネットで確かな情報だと知ったんだがな」と、タバコを一服ぷっかぁ~ふかした後かのような表情でトニーに応えた。常に情強情強と自分のことを誇りに思っているフトニーをあまり刺激したくなかったトニーは、あきらめて家に帰ることにした。

 家に帰ると、トニーは両親に事情をすべて説明した。有名な占い師が居るという場所というのは、ボーリング場だったこと、中に入ると、チャンスタイムで真っ暗だったこと、そのせいか、フトニーが9ポンドのドクロマークの入った地球儀を自分の足に落としたこと、トニーがノリツッコミ気味にかんしゃくを起こしたこと、場内では、客が平均11ポンドの水晶を和尚ピンに向かって投げていたこと、そして、占い師のおばさんは結局いなかったこと。
 それを聞いていたトニーの父さんが、「人生、そんなこともあるよ、あはは~ん」とトニーをなだめた。トニーは、「そっか」と、悟空並みに落ち着いて応えた。「そんなことより、しっかり玄関の鍵を占めてきておくれ」と父さんに言われて、トニーは玄関に行って鍵をしめた。そして、今日出掛ける前にフトニーにもらって、玄関に置いてあった水晶をのぞき込むと、154ポンドのおばさんが映っていた。

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