2015年8月6日木曜日

Day 4 監視社会の裏表

 広瀬香美の『ゲレンデがとけるほど恋したい』と、チューブの『夏を待ちきれなくて』を同時に聞いて頭が痛くなったトニーは、銭湯でリラックスすることにした。
 まず、どこの銭湯に行こうかとネットで検索。画像検索しながら、銭湯の外観が城みたいなことにふと気付いた。その理由を、同時にリピート機能でかけていた、広瀬香美の『ゲレンデがとけるほど恋したい』とチューブの『夏を待ちきれなくて』の音量を小さくしてから、迷惑メールを通じて知り合ったメル友にチャットで聞いてみた。
トニー 「ねぇワクニー、カクカクシカジカ…なんだけど、なんでだろう、なんでだろう?」
ワクニー 「その前に、パソコンの調子はだいじょうぶか?」
チャットをしていると、優しいワクニーが、先日突然ダウンしたトニーのパソコンの調子を気遣ってくれた。フトニーから懸賞品の新しいパソコンをもらったからだいじょうぶだよとトニーが伝えると、メル友はトニーの質問の答えを必死に考えて返信してくれた。
「昔、城で指揮を取っていた武将たちが、温泉好きだったからジャマイカ?」
なるほどと、大きく頷いたトニーは、首をやられた。リラックス目的から首の治療へと目的が変わったトニーは、足早に銭湯に向かった。


 グーグルマップで検索した場所の銭湯にたどり着いたが、トニーが思っていた銭湯とはちょっと違った。銭湯なんて久しぶりなせいか、勝手がよく分からない。まさか、女の人と一対一の銭湯なんて…。これはおかしい。絶対に普通の銭湯ではない。メル友に言われた銭湯だったし、外の張り紙に映っていた店長の顔がフトニーに少し似ている点も気にはなったが、トニーは自分の感覚を信じて、違う銭湯に向かった。
 
 男湯女湯と別れている、外観が城みたいなちゃんとした銭湯にたどり着いた。すると、銭湯内が真っ暗なことに気が付いた。そして、外には一枚の張り紙が貼ってあった。「申し訳ございませんが、営業を停止しております。お湯が盗られました」。それを見たトニーの脳裏に一瞬、「ドリフターズ」の文字が浮かんだ。だが、もう一枚の張り紙を見て、そうじゃないだろうと思った、「銭湯内で、監視カメラ動作中」。これはドリフターズではなくて、田代コース…。とにかく、もう今日は帰るしかない。トニーはタクシーを拾って自宅に帰った。


 家に帰ると、トニーは両親に事情をすべて説明した。広瀬香美の『ゲレンデがとけるほど恋したい』と、チューブの『夏を待ちきれなくて』を同時に聞いて頭が痛くなったこと、迷惑メールを通じて知り合ったメル友とチャットして頷いて首がやられちまったこと、メル友に教えてもらった銭湯が、女の人と一対一の銭湯だったこと、そこに入らずに、普通の銭湯に行ったら営業停止中だったこと、その理由が田代的なことだったこと、そして、競争を勝ち抜くために付加価値を高めているというタクシー会社のネックヒーラー式シートベルトIIで、首が治ったこと。
 その話が終わった跡、トニーは自分の部屋に戻り、天上の監視カメラを見ながら寝た。監視カメラに、フトニーらしき人物が裸の女性にムチで叩かれていたことは、見なかったことにした。

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