2015年9月13日日曜日

Day 18 シャワートイレ購入物語-前編後編

 トニーは今日、自宅のシャワートイレの調子が悪くなり、新しいシャワートイレを買いに行くことにした。車の免許を持たないトニーは、今日もやはりフトニーに車で連れて行ってもらうと、フトニーにメッセージを送った。するとフトニーから、「俺もたった今シャワートイレを使いながら、シャワートイレのない友達がシャワートイレを買いに行く場面を想像していたとこだぞ」と返信があった。タイミングが一致した二人は、一緒にシャワートイレを買いに行くことにした。
 フトニーがトニーを迎えに来た。トニーはちょうどシャワーを浴び終えて、ドライヤーをケツに当て終えていた。「よしッ!」と準備を終えたトニーは、シャワートイレを宣伝していたテレビショッピングが映っていたテレビを消して、フトニーの車に乗り込んだ。


 車で20分ぐらい走り、トイレ関連用品を販売しているという、小さなショールームの前に着いた。ショールームの入り口の看板には『Than BENZA』という社名が書かれていた。ザン・ベンザ。便座よりも、便座以上に何か価値がある、という意味でも込められているのだろうか。
 ショールームの入り口を開けると、「いらっしゃいまシャワー!」という威勢のいい声を営業社員らしき人が出し、それに続いて他の従業員らが「シャワー!!」と大きな声を連呼させた。スペースが小さいせいなのか、品質の高い商品を扱っているのかは分からないが、想像以上に人が溢れていた。奥の展示スペースからは、水も溢れていた。
「切れ痔ですか、それともいぼ痔ですか?」と、若い営業員がトニーに笑顔で接客してきた。それを聞いたフトニーがトニーの耳元で小さな声で、「これ、マジ?」と半笑いで言ってきた。それを聞いたトニーは店員に言った、「お尻の清潔を維持するのが大事」。それを聞いた店員から笑顔が消え、店内が一瞬厳かな空気に包まれた。ある社員は、棚にたくさん並べられていた本を急に漁り出し、「お尻の清潔を…」と小さな声で復唱しながら、中国の古典書をババっと開いてトニーの言葉を調べようとしていた。店側が只者ではないと判断したのか、水が溢れていた奥の展示スペースから、最低部長クラスだろうという幹部社員が体を90度、あるいは最大で110度程度かという角度にシャキッと曲げて、トニーを奥の展示スペースへと招き入れた。

 トニーとフトニーは、激しい雨の日に水たまりの中を歩いた時に、靴がクチャクチャと音をするときのように靴を濡らしながら入室した。
 中に入ると、社長のスローガンらしきものが掲げられていた、「お客様の便座に湯水の如く」。フトニーはそれを見て爆笑しそうになったが、必死に口を手で抑えてトニーの後ろの方で我慢していた。トニーも歯が取れそうなほど笑いをこらえたが、そんな二人を見て部長も大笑い。
 店内に「いらっしゃいまシャワー!」、「今いらっしゃいまシャワー!」などのバリエーションも響き渡る中、三人で大笑いした後、トニーはすぐに100万円のシャワートレイを買って帰った。


 トニーは家に帰ると、今日の出来事を両親にすべて説明した。ザン・ベンザというトイレ関連用品を扱う会社に行ったこと、従業員の威勢が良かったこと、笑顔の接客、客も水も溢れるショールーム、便座に豊かな水を供給するという熱意が込められたスローガン、ちょっと高かったかもしれないが、100万円のシャワートレイを即決で買ったこと。
 その話をした後、トニーの父さんがさっそくシャワートレイを使い、トニーに興糞気味に言った、
「値段は確かにちょっと高かったが、このシャワーは凄いぞ! 前からでも後ろからでも水が出せるぞ!」

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